鹿島アントラーズのクラブ創設の背景を理解するためには、まず日本サッカーの発展と企業クラブの歴史に触れる必要があります。鹿島アントラーズは、古河電気工業（古河電工）を母体として誕生し、Jリーグ参入に至るまでの重要な変遷を経ています。
1. 古河電工サッカー部の誕生と成長
鹿島アントラーズのルーツは、1947年に設立された古河電工サッカー部に遡ります。古河電工は日本の大手電線メーカーであり、企業クラブとしてサッカー部を運営していました。この当時の日本サッカーはアマチュアが主流で、企業がサッカークラブを所有して従業員を中心にチームを構成していました。
古河電工サッカー部は、徐々に日本のトップレベルのチームの一つとして成長し、1976年には**日本サッカーリーグ（JSL）**で初優勝を果たしました。この時期、古河電工サッカー部は国内リーグやカップ戦で数々の成功を収め、強豪クラブとしての地位を確立しました。
2. 古河電工と鹿島町の関係
1980年代後半、日本サッカー界ではプロ化への機運が高まっていました。これに先立ち、鹿島アントラーズの本拠地となる茨城県鹿島町（現在の鹿嶋市）では、地域振興を目的としたスポーツ振興が行われていました。鹿島町は、Jリーグ創設に向けて地域に根ざしたプロサッカークラブを招致し、地域経済の活性化を図ろうとしていました。
1989年、鹿島町と古河電工は、同クラブの移転と地域密着型のプロクラブ創設に合意。これが、鹿島アントラーズ誕生の礎となりました。古河電工サッカー部が企業クラブからプロ化を目指す過程で、鹿島町をホームタウンに据えることが決定されました。
3. Jリーグ発足と鹿島アントラーズの誕生
1988年、日本サッカー協会（JFA）は、日本サッカーのプロ化を目的にJリーグ構想を発表。これに伴い、全国各地でプロクラブが誕生し、従来の企業チームは地域密着型のプロクラブに移行していきました。古河電工サッカー部もこの流れに乗り、1991年に「鹿島アントラーズ」として正式にクラブ化されました。
チーム名の「アントラーズ（Antlers）」は、鹿島神宮の象徴である鹿の角に由来し、鹿島地域の象徴として命名されました。この時期、ブラジルの伝説的サッカー選手ジーコが鹿島アントラーズの顧問兼プレイングディレクターとして参加し、チームの方向性を決定づける大きな役割を果たしました。ジーコの存在は、鹿島アントラーズの「勝利へのこだわり」というクラブ哲学にも大きな影響を与えています。
4. Jリーグ開幕と鹿島アントラーズの躍進
1993年にJリーグが正式に開幕し、鹿島アントラーズは初年度から参加しました。Jリーグ初戦となった名古屋グランパスとの試合では、鹿島が勝利を収め、クラブの名声を一気に高めました。これは、プロ化移行後の日本サッカーにおいても重要な瞬間であり、鹿島アントラーズがその後のリーグ戦で強豪クラブとして活躍するきっかけとなりました。
5. 鹿島アントラーズのプロ化成功の要因
鹿島アントラーズが成功した要因の一つは、地域密着型クラブとして、地元の強い支持を受けたことです。地域住民との交流や地元企業とのパートナーシップが積極的に行われ、ホームスタジアムであるカシマサッカースタジアムも地域の象徴的存在となりました。また、古河電工の技術力や資金力を背景に、クラブ運営は安定し、強力なチーム作りが可能となりました。
さらに、ブラジルサッカーとの関係も重要です。ジーコの指導やブラジル人選手の起用がクラブに技術的な進化をもたらし、鹿島は技術的に優れたチームとして成長していきました。このブラジルとの深い関係性は、クラブのスタイルやフィロソフィーにも色濃く影響を与えています。
まとめ
鹿島アントラーズの創設は、古河電工サッカー部の伝統と、地域密着型クラブへの変革という大きな流れの中で実現されました。Jリーグ参入を果たし、プロ化への挑戦を経て、現在では日本を代表するサッカークラブの一つとなっています。地域と密接に結びついた経営、ブラジルサッカーの影響、そしてジーコの存在が、鹿島アントラーズの成功における大きな要因と言えるでしょう。
