鹿島アントラーズは、Jリーグの中でも特にセットプレーを重要な武器としてきたクラブの一つです。セットプレーは、直接フリーキック、コーナーキック、間接フリーキック、スローインなど、試合の流れを一瞬で変える得点のチャンスが多いプレーです。鹿島はこれらのシチュエーションで優れた組織力と個人の技術を活かし、数多くのゴールを生み出してきました。以下では、鹿島アントラーズのセットプレーの強みとその背景について詳しく説明します。
1. セットプレーの強さを支える要素
1.1 優れたキッカーの存在
鹿島アントラーズがセットプレーで多くの成果を上げている理由の一つが、優れたキッカーの存在です。歴代の選手の中には、ジーコ、小笠原満男、遠藤康、さらには土居聖真(移籍)など、正確なキックを持つ選手が多数います。
- ジーコは、鹿島アントラーズのセットプレーの基礎を築いた選手であり、特にフリーキックやコーナーキックで数々の決定的なプレーを見せました。
- 小笠原満男は、ミッドフィールダーとして長年鹿島の中心選手を務め、セットプレー時にはキックの精度と戦術眼を活かし、ゴールやアシストを数多く記録しています。
これらの選手たちのキック精度は非常に高く、フリーキックやコーナーキックの際には常に相手ゴールに脅威を与えてきました。
1.2 フィジカルに優れた選手の存在
セットプレーでは、空中戦が重要な要素となります。鹿島アントラーズは、特にフィジカルに優れた選手を多く揃えており、セットプレーの際にゴール前での競り合いに強みを発揮してきました。歴代の選手たちは、セットプレー時に正確なタイミングでゴールに飛び込み、得点機会をものにしてきました。
- 秋田豊や岩政大樹のようなセンターバックは、守備だけでなく、攻撃時のセットプレーでも高さを活かしてゴールを決めてきました。彼らは特にコーナーキックやフリーキック時に強力なヘディングでゴールを狙います。
- 近年では、ブラジル人選手であるレオ・シルバやエヴェラウドなどもセットプレー時に重要な役割を果たしており、相手守備に対してフィジカルを活かした強力なプレーを展開しています。
1.3 組織的な動きと戦術的アプローチ
鹿島アントラーズは、セットプレーにおいて組織的な動きを非常に重視しています。単純に高い選手が飛び込むだけでなく、事前に緻密に準備されたプレーが展開されます。キッカーとゴール前の選手たちの連携により、相手ディフェンスのマークを外し、効果的に攻撃を仕掛けることができます。
- ゾーンディフェンスに対する工夫:セットプレー時、相手チームがゾーンで守る場合、鹿島は巧みなスクリーンプレーや、選手の動きによって相手のマークを引き離す戦術を使います。これにより、マークを外した選手がゴール前に飛び込むスペースを作り出し、得点の機会を増やしています。
- ニアポストとファーポストの使い分け:鹿島はコーナーキックやフリーキックの際に、ニアポストへの速いボールを入れることもあれば、ファーポストで競り合いを狙うこともあります。これにより、相手守備陣のバランスを崩し、予測しにくいプレーを展開します。
1.4 精密なセットプレーの練習
鹿島アントラーズは、セットプレーに多くの時間を割いて練習しています。セットプレーは、試合の流れを一瞬で変える重要な要素であるため、チームはあらかじめ多くのパターンを準備し、試合で効果的に活用できるよう徹底的に訓練を行っています。
- キックの精度:キッカーがどのポジションにボールを入れるのか、事前に明確に決めており、試合ではその精度が発揮されます。例えば、ニアポストに飛び込む選手にピンポイントで合わせる、ファーポストで競り合う選手に高いボールを送るなど、キッカーとフィニッシャーの連携が非常に重要です。
- 緻密な動きの計算:ゴール前での選手の動きやタイミングが緻密に計算されており、例えば数人の選手がダミーランを行い、最終的に飛び込む選手にマークがつかないような状況を作り出すことも多いです。
2. 主要なセットプレーのタイプと鹿島の強み
2.1 コーナーキック
鹿島アントラーズのセットプレーで特に強みを発揮するのがコーナーキックです。コーナーキック時には、精度の高いキッカーが正確にボールを供給し、フィジカルに優れた選手たちがゴール前で競り合いに勝つというパターンが多く見られます。
- 鹿島は、ニアポストに素早くボールを入れ、相手の守備を崩す形や、ファーポストに高くボールを送ってそこから押し込む形など、様々なバリエーションを使い分けています。
- ゴール前での混戦から得点を決めるケースも多く、相手の守備陣を混乱させる組織的な動きが得点機会を生んでいます。
2.2 フリーキック
鹿島アントラーズは、直接フリーキックでも多くのゴールを決めてきました。特に、ジーコや小笠原満男といったキッカーは、正確なコントロールでゴールを狙うことができ、相手にとって大きな脅威となっていました。
- ジーコは、かつてフリーキックの名手として知られ、ゴール前のフリーキックではほぼ確実に得点を狙える存在でした。彼の影響を受けた鹿島は、フリーキックの重要性を高く認識し、常に優れたキッカーを育成してきました。
- また、間接フリーキックでも、キッカーがゴール前に精度の高いクロスを入れることで、ヘディングシュートやこぼれ球を狙った得点が多く見られます。
2.3 スローイン
スローインは通常、セットプレーとしての注目度は低いですが、鹿島アントラーズはスローインからの攻撃の組み立てにも力を入れています。サイドライン際でスローインから素早く攻撃を開始し、クロスやシュートに繋げるプレーが多く見られます。
- 特に、スローインからボールを収めた選手が中央にパスを出し、攻撃を展開する形が多く、スローインの精度とプレースピードが鹿島の強みとなっています。
3. 鹿島アントラーズのセットプレーの今後の課題
鹿島アントラーズは、セットプレーで強みを発揮してきましたが、さらに改良すべき点もあります。特に、近年のサッカーでは、対策として相手チームがゾーンディフェンスをより組織的に展開することが多く、これに対していかに対応していくかが今後の課題となるでしょう。
- クリエイティブなセットプレー:よりクリエイティブなセットプレーのパターンを増やすことで、相手の予測を裏切り、ゴールチャンスを増やすことが求められます。
- ディフェンシブセットプレー:相手のセットプレーに対する守備も重要です。特に、ゾーンディフェンスを効果的に機能させ、相手に自由なプレーをさせない守備の精度向上が求められています。
まとめ
鹿島アントラーズは、セットプレーにおいて高いキック精度、フィジカルな選手の強さ、組織的な動きの連携により、長年にわたり多くのゴールを生み出してきました。特に、コーナーキックやフリーキックでは強力な得点源として機能しており、優れたキッカーとフィニッシャーの連携がクラブのセットプレー成功の要因となっています。
今後、セットプレーのさらなる進化が求められる中で、鹿島アントラーズがどのような新たな戦術を導入し、相手に対する優位性を維持していくかが注目されます。